子どもは自然におぼえるか?— 乳幼児期の学習と遊戯性
大人は、知識や微細な行為については、「教えなければ身に付かない!」と、子どもに「学習」させる必要性を強く感じていて、乳幼児期の早くからそれらを身につけるための練習をしようとします。
しかし、粗大な運動となると「自然に身につくもの」と思い込んでいる人が多いのではないか?と思われます。
人間が、人間として成長していく過程で、自然に覚えるという感覚もありますが、実はそれらは苦痛なく練習していた結果です。
無意識とは言えませんが、少なくとも「練習した」という意識ではなく、楽しく興じていたという遊びであったことで、少し困難なことも挑戦し、繰り返す喜びにしていたので、気が付いたら身についていたというのが正しいでしょうか。ちょうどゲームを攻略することに夢中になるように。
大人自身も、これまで遊びながら覚えたことだから、「教えてもらった」(学習して身に付いた)という記憶になっていないだけなのだと思います。
遊びで子どもが育つということの中には、例えば体の動かし方そのものを習得していく粗大な運動(歩く、走る、ジャンプするなど)も、ただ自然に成長してきただけでなく、大きな発達的な意味を含んでいるのです。
赤ちゃんが歩き始めの頃、「あんよは上手」と、励まされて懸命に歩いたように、子どもは大人の励ましと笑顔によって、まず「上手に歩きたい」という自発的な意思をもち、自分の体の様々な機能と動きを練習し始めます。
どんな年齢でも、何かを身につけさせようとする時に、子ども自身が意思をもち、目的に向かうことと、大人がそれに呼応して、その姿を励ますことが大事です。
最近、怪我を怖れて「安全」な遊びに意図的に誘うような大人もたくさんいるようですが、その子自身の今必要な能力を引き出し、伸ばしていくには、安全確認をしながら、様々な冒険を繰り返し自分のイメージと体の動きを一致させることが大切です。
これは、当たり前に立ち、歩き、走り、というような粗大運動の発達を例に示していますが、難しい課題こそ面白く遊戯性に富んだものであることが、乳幼児期に必要な学習の仕方だといえます。
保育園でも、運動的なこと、知的なこと、表現性など、どの子も苦手意識にならないようにいかに楽しく、その活動にチャレンジしていけるかを保育者も考えながら日々の遊びを通じて関わっています。
個々の子どもが、どんな時に、どんなものに興味を持ち、どんな行為をしているか?を、私たち大人も良く観察し、たくさん一緒に遊ぶ中で、基本となる様々な発達課題も楽しく学んでいけるように大人は意識したいですね。
園長 日下部樹江
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