卒園おめでとうございます。
卒園式の当日、子どもたちの張り切っている気持ちが通じたように、天気は雨上がりの合間のうららかな日和になりました。
今年もコロナ感染防止の影響もあり、卒園児と保護者2名という限定で執り行わせていただくことになりましたが、子どもたちは緊張の中にもでわくわくしている様子でした。
いつの間にか、たくさんのことを身に着けてたくましくなっていること、そのまっすぐな瞳が自信に満ちていることに、いつもながら圧倒される瞬間です。
2年にわたり続くコロナ感染の現状や戦争。
目まぐるしく変化する社会情勢、社会が不安定さ増していく中で卒園していくこの子たちは、これからを育つ子どもたちです。
この子たちの未来を見据えて今、私たち大人がどんな子育てをしていくのかが、改めて問われているように感じます。
今の状況を、大人が「20年前の常識」にとらわれず、考えのベースを変化させていく意識をもてるか?と、問われているということではないでしょうか。
具体的にどういうことかというと、「成績が良ければよい就職ができ、安定した人生がある」というような、一定の条件さえ得れば安泰だという考えと、今、私たちが直面している現実とが一致していないということを見なければならないということなのだと思います。
職業も細分化され、教科書を覚えて行うような知識だけでは、その役目はAIに委ねる方向へと、すでに産業の在り方が変化してきています。
社会が多様性を増し、複雑化し、さらに変化のスピードが速くなれば、人間の生活も良くも悪くも変化していかざるを得ません。多様性は様々な可能性を尊重できる反面、起きる問題は複雑に絡み合い、困難な側面もあるでしょう。
社会が解決困難な課題を内包している時代に成長していく子どもたちに、何を願い、子どもの育ちにどんな援助ができるのかを、私たち大人がしっかり考え、役割を果たせるようでありたいと思います。
だからこそ私たちの保育にも、より具体的に子どもの育ちを見通す保育内容、保育の構成が求められていると思います。
私は幼児期の育ちで大切にしていきたいことをいくつか考えています。
1つは、粘り強い思考力。解決困難な問題に対峙していく場面が多いとなると、あきらめずに自ら考えようという気持ちが大事になります。
思考や忍耐力は、それまでの育ちの中で、どのくらい考えてきたかで決まってきます。困難にあっても思考停止であきらめてしまうのではなく、まず「自分の精一杯で、できることを駆使して考えた」という経過の中で培われていく力です。
もし、その時、思い通りに解決にいたらなくても、そこから学び、自分への信頼が持てることで、芯のようなたくましさが備わっていくでしょう。
2つ目は、人と協同する力です。困難な課題ほど一人で解決することは難しいので、他者と協同して知恵を出し合うことが必要です。そのため、成長とともに対人関係への在り方も大事な力でしょう。
3つ目は、新しいものを生み出す経験です。今までと同じようにできない局面に突き当たった場合に、その条件の中でどうできるかを考えださなければ前に進めません。今ある状況、条件の中でより良い方向を見出すことや、発想を転換し突破できる力とでも言いましょうか。
そのどの力も、実際に経験をすることでしか獲得できないものばかりです。
座学も大事ですが、幼児や小学生の児童期に経験学習をたくさんすることが、新しく求められる力を身に着けていく学びになっていくでしょう。
保育園では、特に今年度、制限された環境の中で、いかに子どもたち自身が主体的な取り組みができる活動を保証できるのか。どのように、楽しく、子ども同士が互いの個性や力を発揮しやすい保育活動を実現するかが大きな課題でした。
その中でも、展示や卒園式での発表でご覧いただけたように、日常の活動から子どもが能動的に取り組める活動を経験学習の機会になるように行うことができたのではないかと思います。
また、生活に付随する食育活動も、給食職員がその専門性を生かしながら、保育と連携し、事前学習や調理実習を期ごとに行うことができました。
その活動が子どもたちにとって、思い出とともに得た、知識や充実した経験値になっていることを示すかのように、晴れやかで力強い姿、大きく成長していることを私たち大人に見せてくれた卒園式だったと思います。
きっといつまでも、みんなで経験したことを心と体が覚えているはず!
そのキラキラした瞳に、むしろ勇気づけられたのは私たち大人ですね。
改めて、卒園おめでとう!
寂しくなるよ。でも、心からずっとずっとエールを送っています。
2022年3月19日
園長 日下部樹江