神様からのおくりもの
今回のお話し会では、クリスマスの時期でもあり、幼児になってそれぞれの子どもが相手や自分の個性について、考えたり比べたりしていく時期にも差し掛かっていることから、この本を選びました。
お話しは、神様がどの子にも贈り物を授けて生まれてくる、というもので、物語の中では5人の赤ちゃんが「歌が好き」「よく食べる」「力持ち」「優しい」「よく笑う」という個性を持った子どもに育ちます。くるみ組の子どもたちも、どの子にも素敵な個性があるということが伝わってほしいと思いながら演じました。
実際に演じてみると、子どもたちはプレゼントや出てくる子どもに注目してみている様子がありました。「あかちゃんだね」「なにかでてきた」などと話しながら見ている子も居ました。
クラスに戻ってから、子どもたちは人形を使った遊びをいつもより多くしていました。原作の絵本を出したことで、自分でゆっくりとストーリーを振り返る様子も見られていました。会話の中で、「○○ちゃんはどんな贈り物をもらってきたんだろうね」「あー、きっと元気だよね」などと話しが弾んでいました。ペープサートの棒を外し、子どもたちに実際に使った道具を下したことで、ハートの子たちが大人やお話し会に参加できなかったあんずの子に、お話し会を開いてくれています。
そうやって、自分たちが経験したことを振り返り、再度感覚し直しながら、子どもたちはお話を自分の世界に取り込んでいくのだなぁと思います。
チリンのすず
「ちりんのすず」はアンパンマンの作者、やなせたかしさんが描いた絵本です。
やなせたかしさんは「正義のためだ」と言われていた戦争で愛する弟をなくし、戦後は「侵略のための戦争だった」とされるなか「正義は逆転する」と思い知らされました。 そして「逆転しない真の正義はひもじい人にパンを差し出すことだ」という答えにたどり着き、アンパンマンを生み出したとのことです。
アンパンマン大好きな子どもたちは、作者のそんな純粋な正義にきっと共感するのかなと思います。
この「ちりんとすず」は、一貫して平和と正義を作品に託したやなせたかしさんが描いた、狼に親をころされた子羊のちりんが、かたきである狼に鍛えられついにかたきうちをするという話です。
お話しの中で、お母さんを死なせたカタキである狼のウォーと過ごすうちに、父のように慕うようになっていた気持ちに気付く最後のチリンの言葉に大人も胸が熱くなります。
幼児の子どもにとって少し重い話ですが、死が身近になく軽い言葉として扱われている昨今、その重さと人を悼む気持ちを少しでも感じてもらいたいという願いと、もうそうした複雑な心理を受け止められる感受性が育ってきた子どもたちの力を信じて、お話会の作品に選びました。
お話し中は、いつになく真剣に見入る姿や、お話会の後、保育室に置かれた「ちりんのすず」を手に取り友達と一緒に見ている子ども達の姿から、少しでもお話の意味を感じ取ってくれたのではないかと感じています。