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新年、元気にスタートしました

明けましておめでとうございます。

穏やかな天気になり、子どもたちも保育者も元気に新しい年を迎えて生活をスタートしました。

今年は、元旦から震災や飛行機の事故など大変な出来事があり、こうして穏やかに過ごせる日常がとても有難いことだと改めて感じています。

でも今年は辰年、辰は陽の気が震えるように大きく動き、満ち溢れる状態を表すので、新しいことが次々に起こる良い年になるとも言われています。

子どもたちと共に新しい未来をより良く築いていけるよう、保育の充実にも一層努力と工夫をしていきたいと思います。

新しい時代の、乳幼児保育・幼児教育実践に向けて

今、皆さんの日常に欠かせないスマートフォン。

保育園の設立当時には携帯電話は普及していたものの、スマホはまだなく、様々なことが実際にはアナログとデジタルが入り混じっていて「手動だけど、便利にはなったね」という感じでした。

でも、それから20年も経たないうちに「AIの時代」に変化し、私たちにとっては大きな「技術革新」でも、今の子どもたちには生まれた時からある技術であり、日常に普通に浸透しているツールばかりです。疑問に思う余地すらないでしょう。

10年くらい前までは、デジタルツールの普及は子どもの成長にとって害が大きいと、社会的な受け止めは、どちらかと言えばマイナス面が指摘されていたように記憶しています。

ですが、もはやこのAIの時代にどんな教育が必要で、子どもたちがどのように人間らしく、さらに自由に社会のなかで生きていく力を獲得していけるのかを教育の大前提にする必要があります。

簡単に言えば、今、世界中で注目されているSTEAM教育が乳幼児期からの教育に求められているということです。(STEAM教育の詳しい説明は、省きます)

つまり、これまでは「先生や大人に課題を提供され、それをいかに解き、正しい考え方を習得していくか」が、教育の重点とされていたことも、世界中にあふれる情報を様々に活用しながら、「それらを統合し、課題の発見・解決や社会的な価値の創造に結び付けていく資質・能力の育成が求められる。」と、すでに文科省がそうした教育の推進を示しているのです。

これからの時代において、保育でも「自分で課題を見つけ解決していくために重要な力」として、乳幼児から育むことが求められています。

保育での取り組みで大切にしたいこと

私たちの保育ではこれまでも、遊びの中で物事の因果関係の理解や論理的な思考が大きく育つような活動を意識的に行っています。

自由保育の枠組みや活動の中には、このような思考や取り組みができる時間や環境が多く保障されているからです。

大人の指示に頼らず、子どもたちが実際にモノを操作したり、自然体験(水遊びや戸外活動など)、五感を使いながら「どうして?」「どうやってやろうか?」「これは何?」と、考える機会をたくさん持てるように、子どもの自由度を尊重できるように、日課をくみ、環境を用意し、大人の関りも意識的に行うようにしています。

何よりも日課の中で、子どもが欲する時間を考慮しながら配分することで、満足いくまでじっくり取り組めるように時間の確保もされることが、子どもにとっては「やってみたいことが実現できる」環境として大きな意味を持っています。

工作や表現活動など、個々の子どもが自分の興味に十分向かいながら、試行錯誤したり、繰り返し試したり、アイデイアを組み合わせたりする過程に「課題の発見」がされていきます。

今年も具体的な保育の場面で、子どもたちがどんなことを楽しみ、経験しているのかを実践の紹介としてHP上でも発信していきたいと思います。

楽しく学ぶことが、一番身につく学び! 乳幼児教育の一番根っこにしたいことを合言葉にして。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

園長 日下部樹江

お話し会をしました

神様からのおくりもの

今回のお話し会では、クリスマスの時期でもあり、幼児になってそれぞれの子どもが相手や自分の個性について、考えたり比べたりしていく時期にも差し掛かっていることから、この本を選びました。

お話しは、神様がどの子にも贈り物を授けて生まれてくる、というもので、物語の中では5人の赤ちゃんが「歌が好き」「よく食べる」「力持ち」「優しい」「よく笑う」という個性を持った子どもに育ちます。くるみ組の子どもたちも、どの子にも素敵な個性があるということが伝わってほしいと思いながら演じました。

 実際に演じてみると、子どもたちはプレゼントや出てくる子どもに注目してみている様子がありました。「あかちゃんだね」「なにかでてきた」などと話しながら見ている子も居ました。

クラスに戻ってから、子どもたちは人形を使った遊びをいつもより多くしていました。原作の絵本を出したことで、自分でゆっくりとストーリーを振り返る様子も見られていました。会話の中で、「○○ちゃんはどんな贈り物をもらってきたんだろうね」「あー、きっと元気だよね」などと話しが弾んでいました。ペープサートの棒を外し、子どもたちに実際に使った道具を下したことで、ハートの子たちが大人やお話し会に参加できなかったあんずの子に、お話し会を開いてくれています。

そうやって、自分たちが経験したことを振り返り、再度感覚し直しながら、子どもたちはお話を自分の世界に取り込んでいくのだなぁと思います。

チリンのすず

「ちりんのすず」はアンパンマンの作者、やなせたかしさんが描いた絵本です。

やなせたかしさんは「正義のためだ」と言われていた戦争で愛する弟をなくし、戦後は「侵略のための戦争だった」とされるなか「正義は逆転する」と思い知らされました。 そして「逆転しない真の正義はひもじい人にパンを差し出すことだ」という答えにたどり着き、アンパンマンを生み出したとのことです。

アンパンマン大好きな子どもたちは、作者のそんな純粋な正義にきっと共感するのかなと思います。

この「ちりんとすず」は、一貫して平和と正義を作品に託したやなせたかしさんが描いた、狼に親をころされた子羊のちりんが、かたきである狼に鍛えられついにかたきうちをするという話です。

お話しの中で、お母さんを死なせたカタキである狼のウォーと過ごすうちに、父のように慕うようになっていた気持ちに気付く最後のチリンの言葉に大人も胸が熱くなります。

幼児の子どもにとって少し重い話ですが、死が身近になく軽い言葉として扱われている昨今、その重さと人を悼む気持ちを少しでも感じてもらいたいという願いと、もうそうした複雑な心理を受け止められる感受性が育ってきた子どもたちの力を信じて、お話会の作品に選びました。

お話し中は、いつになく真剣に見入る姿や、お話会の後、保育室に置かれた「ちりんのすず」を手に取り友達と一緒に見ている子ども達の姿から、少しでもお話の意味を感じ取ってくれたのではないかと感じています。