Stay home -子どもとの生活の中で-

2020年5月9日 Kids Encourage 0 Comments

 保護者の皆様、大変なところ休園特別保育にご協力いただきありがとうございます。まずは皆様が健康を害さずに、感染危機が収束して、はやく通常の生活に戻れることを願ってやみません。
 新型コロナウイルス感染による自粛要請、休園が延長になり、親子でお家にいる時間が続いています。お休みしている子どもたちも元気に過ごせているでしょうか。
 これだけ長期間、しかも行動範囲が限られ、お家の中での生活を余儀なくされると乳幼児の子どもと共に生活していくことは、様々な工夫が必要になっているかと思います。
 また、長時間、空間を共にしていることで、どうしても親子や兄弟姉妹の関りが密度の濃いものになり、良いこともたくさんありながらも、子どもがよく見える分だけ親目線では気になる事も出てくるなど、親子双方のストレスになっていないか?と少し心配もしています。
 でも、こんな時だからこそ、ちょっとまなざしを変えて子どもを見つめてみるのも貴重な時間になるかもしれません。今、目の前にいる(どんな状態であっても)子どもを見る視点の1つに「その時期の発達特徴」ということが加わると、子どもが違って見えるかもしれません。試してみて下さいね。

 満2歳ごろ。りんご組~あんず組の頃の子どもは、自分の自我を育てている時期ですね。
いわゆるイヤイヤ、反抗、抵抗の表現が多い時期で、ガンとして自分の主張を通そうとすることや、何かをはばまれたらカンシャクを起こすことも。
人をたたいたり、モノを投げたりという好ましくはない表現、行動をすることも多くなったり・・・。
「何でこんなふうになるのだろう?」大人は困惑することもありますよね。
子どもによって表現の多少はありますが、皆が通る発達の道筋です。ご安心を。

 この時期の子どもは、自分の外の世界に自らぶつかりながら、外の世界を取り入れようとしています。
一生懸命にキャパを広げている! というと前向きでわかりやすいでしょうか。(笑) 
わざわざ自分でぶつかり稽古をしているわけですから、本人の中にも抵抗やきしみ、痛みのある体験です。なので、マイナスなとらえをされると情緒も乱れ、混乱を表すのです。
そこから1歩成長するには、小さなことの「自分で突破した!できた!」という自分の力で実現することの積み重ねが必要です。そしていつの間にかキャパを広げ、知識、技術の成長になり、心の側も変化していきます。
ですから、子どもの表現、行為の断片を切り取って心配を抱えないでくださいね。

 でも、「できることを増やす積み重ねって?」 
何かを教え込み、トレーニング的に行為を誘う事ではありません。
日常に行う普通のことの中で、少し大人が意図的に付き合うことでいいのです。

 例えば、毎朝着替えをするとき、子どもと一緒に服を選ぶ、積極的な子ならタンスから自分で出すことからでも。最初は能動的ではない子でも、大人が靴下を2足出して「どっちにする?」と選んでもらう。
 おやつも「どれでも2つどうぞ」と自分の器に自分でとってもらう。みんなで分けて、余ったのは残り全部自分のもの!と主張してもOK。
「パパにもう1つちょうだい」に応えてくれて、もう1つ分けてくれたら「ヤッター、ありがとう!」と喜んで一緒に食べましょうか。
 他にも小さなお手伝いをお願い。「これ、ごみ箱に捨ててくれますか?」「ありがとう」
何でもそんな風に、自分で選ぶことを増やし、生活の中にちりばめていけるといいなと思います。

 そうして少しずつ成長し、では、2歳半から3歳半くらいになるとどうでしょう。

 意外なことに、こうして積み上げてきたことが何故か後退したように見えることも出現します。生活リズム、生活習慣、なついたはずの祖父母への対人関係のきしみ、等々。一度できあがったと思った成長の姿がグラつきを見せ、大人はあわてます。
でも、これもまたさらにキャパを広げていくステップ。今までの自分から次なる自分へ、「~ではない~だ」という自分を真ん中にした対になる関係を比較し、自分なりに再検討する自我へと拡大中です。より確かな、より充実した自分の獲得のために手はぬきません。(笑) 再検討は慎重に行われます。

 ですから、この時期は何より自分が納得しなければならないので、そこでたとえ正解であっても他者に意見を挟まれすぎると検討は長引きます。
大人はあまり深く考えず、問い詰めず、子どものありのままを認めるといいのだと思います。

 例えば、いつもは良くても、今日はダメだという時、「今日はいやなんだ~、そんなきぶんじゃないのか~」と、いいとも悪いとも評価せずに応答する。
あれ?今日はやりすぎじゃないの?? と、感じる時には「ひゃ~、今日はワイルドだね~」「あら?今日はおじいちゃんがなんか変??」など、主要な問題を少しはぐらかして行為や表現を否定も肯定もせずに「待つ」ことがいいのだろうと思います。
 そうしていくうちに「自分がああしたい・・こうしたい・・」というものへと、段々と内面化していくことが自立的な思考を育みます。

 では、もう少し大きくなっての幼児期、4歳~5.6歳児はどうでしょう。

 この時期は、とても発達幅が大きいことを理解しておきたいですね。子どもによって成長デコボコが多いので兄弟姉妹でも他児と比べずに見守ることが大事です。子どもは生活の主人公でありたいと強く思っていますし、その自分を意識しながら社会性の広がりを見せていきます。

 例えば、いつまでも同じことをしている。一度気に入ると何度もやりたがるからきりがない・・。ということも出て来るかもしれませんが、そういう自我の頃です。
「いま楽しいことをズーーーーット持ち続けたいジブン!」なんですね。そんな自己中心的な主人公たるジブンを持ちながら、向かい合う(関わる)相手の側についてもわかるようになります。左右の手のひらを合わせて見ると、互いの手が「反対になる」ことや、並べた車の向きを替え、進行方向を改めて決めなおすなど、物事を転倒してみる事もし始めます。自分が主人公でありながらも、相手と自分の関係をかみ合わせて理解する力がついて、相手との共通性を見出していきます。
 この時期の子どもとは、オモチャや道具を媒介にして共通のものを挟んでかかわることで、関係をスムーズにします。共通した目的やイメージで協同してする遊びや活動が相手との関係性も充実させていきます。「自分の中のジブン、と相手の中のジブンが仲よくなれる」のです。

 家の仕事への参加を促すことも良い体験です。その際は、大人の便利なところで子どもを使おうとすることに気を付けて、子どもが自分で達成感がもて、子どもに任せられる内容を分担したいですね。
 料理だったら、さやえんどうの筋むいて、とか、みそ汁の味噌を量って入れてね、とか。洗剤の詰め替えなども、こぼしても大惨事にならないような場所で一からお任せするのも良いかもしれません。
 遊びは、大人も子どもも、くり返しの中で上達していけるようなゲームや運動がいいですね。大人も真剣にチャレンジしていくと互いに励みになるかも。

 健康や命を脅かす現状の危機は脱したいと強く願いますが、stay home!
 この特別な時間にしかできないことを、大人も子どもも経験できれば、未来をよく生きることにつながるだろうと思っています。
 ぜひ、子どもとの時間を楽しんで、じっくり子どもを見つめてみて下さい。

 6月に元気で会えますように。

2020年5月9日
キッズエンカレッジ
園長 日下部 樹江

認可保育園 Kid's Encourage

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