Stay home -子どもとの生活の中で-

 保護者の皆様、大変なところ休園特別保育にご協力いただきありがとうございます。まずは皆様が健康を害さずに、感染危機が収束して、はやく通常の生活に戻れることを願ってやみません。
 新型コロナウイルス感染による自粛要請、休園が延長になり、親子でお家にいる時間が続いています。お休みしている子どもたちも元気に過ごせているでしょうか。
 これだけ長期間、しかも行動範囲が限られ、お家の中での生活を余儀なくされると乳幼児の子どもと共に生活していくことは、様々な工夫が必要になっているかと思います。
 また、長時間、空間を共にしていることで、どうしても親子や兄弟姉妹の関りが密度の濃いものになり、良いこともたくさんありながらも、子どもがよく見える分だけ親目線では気になる事も出てくるなど、親子双方のストレスになっていないか?と少し心配もしています。
 でも、こんな時だからこそ、ちょっとまなざしを変えて子どもを見つめてみるのも貴重な時間になるかもしれません。今、目の前にいる(どんな状態であっても)子どもを見る視点の1つに「その時期の発達特徴」ということが加わると、子どもが違って見えるかもしれません。試してみて下さいね。

 満2歳ごろ。りんご組~あんず組の頃の子どもは、自分の自我を育てている時期ですね。
いわゆるイヤイヤ、反抗、抵抗の表現が多い時期で、ガンとして自分の主張を通そうとすることや、何かをはばまれたらカンシャクを起こすことも。
人をたたいたり、モノを投げたりという好ましくはない表現、行動をすることも多くなったり・・・。
「何でこんなふうになるのだろう?」大人は困惑することもありますよね。
子どもによって表現の多少はありますが、皆が通る発達の道筋です。ご安心を。

 この時期の子どもは、自分の外の世界に自らぶつかりながら、外の世界を取り入れようとしています。
一生懸命にキャパを広げている! というと前向きでわかりやすいでしょうか。(笑) 
わざわざ自分でぶつかり稽古をしているわけですから、本人の中にも抵抗やきしみ、痛みのある体験です。なので、マイナスなとらえをされると情緒も乱れ、混乱を表すのです。
そこから1歩成長するには、小さなことの「自分で突破した!できた!」という自分の力で実現することの積み重ねが必要です。そしていつの間にかキャパを広げ、知識、技術の成長になり、心の側も変化していきます。
ですから、子どもの表現、行為の断片を切り取って心配を抱えないでくださいね。

 でも、「できることを増やす積み重ねって?」 
何かを教え込み、トレーニング的に行為を誘う事ではありません。
日常に行う普通のことの中で、少し大人が意図的に付き合うことでいいのです。

 例えば、毎朝着替えをするとき、子どもと一緒に服を選ぶ、積極的な子ならタンスから自分で出すことからでも。最初は能動的ではない子でも、大人が靴下を2足出して「どっちにする?」と選んでもらう。
 おやつも「どれでも2つどうぞ」と自分の器に自分でとってもらう。みんなで分けて、余ったのは残り全部自分のもの!と主張してもOK。
「パパにもう1つちょうだい」に応えてくれて、もう1つ分けてくれたら「ヤッター、ありがとう!」と喜んで一緒に食べましょうか。
 他にも小さなお手伝いをお願い。「これ、ごみ箱に捨ててくれますか?」「ありがとう」
何でもそんな風に、自分で選ぶことを増やし、生活の中にちりばめていけるといいなと思います。

 そうして少しずつ成長し、では、2歳半から3歳半くらいになるとどうでしょう。

 意外なことに、こうして積み上げてきたことが何故か後退したように見えることも出現します。生活リズム、生活習慣、なついたはずの祖父母への対人関係のきしみ、等々。一度できあがったと思った成長の姿がグラつきを見せ、大人はあわてます。
でも、これもまたさらにキャパを広げていくステップ。今までの自分から次なる自分へ、「~ではない~だ」という自分を真ん中にした対になる関係を比較し、自分なりに再検討する自我へと拡大中です。より確かな、より充実した自分の獲得のために手はぬきません。(笑) 再検討は慎重に行われます。

 ですから、この時期は何より自分が納得しなければならないので、そこでたとえ正解であっても他者に意見を挟まれすぎると検討は長引きます。
大人はあまり深く考えず、問い詰めず、子どものありのままを認めるといいのだと思います。

 例えば、いつもは良くても、今日はダメだという時、「今日はいやなんだ~、そんなきぶんじゃないのか~」と、いいとも悪いとも評価せずに応答する。
あれ?今日はやりすぎじゃないの?? と、感じる時には「ひゃ~、今日はワイルドだね~」「あら?今日はおじいちゃんがなんか変??」など、主要な問題を少しはぐらかして行為や表現を否定も肯定もせずに「待つ」ことがいいのだろうと思います。
 そうしていくうちに「自分がああしたい・・こうしたい・・」というものへと、段々と内面化していくことが自立的な思考を育みます。

 では、もう少し大きくなっての幼児期、4歳~5.6歳児はどうでしょう。

 この時期は、とても発達幅が大きいことを理解しておきたいですね。子どもによって成長デコボコが多いので兄弟姉妹でも他児と比べずに見守ることが大事です。子どもは生活の主人公でありたいと強く思っていますし、その自分を意識しながら社会性の広がりを見せていきます。

 例えば、いつまでも同じことをしている。一度気に入ると何度もやりたがるからきりがない・・。ということも出て来るかもしれませんが、そういう自我の頃です。
「いま楽しいことをズーーーーット持ち続けたいジブン!」なんですね。そんな自己中心的な主人公たるジブンを持ちながら、向かい合う(関わる)相手の側についてもわかるようになります。左右の手のひらを合わせて見ると、互いの手が「反対になる」ことや、並べた車の向きを替え、進行方向を改めて決めなおすなど、物事を転倒してみる事もし始めます。自分が主人公でありながらも、相手と自分の関係をかみ合わせて理解する力がついて、相手との共通性を見出していきます。
 この時期の子どもとは、オモチャや道具を媒介にして共通のものを挟んでかかわることで、関係をスムーズにします。共通した目的やイメージで協同してする遊びや活動が相手との関係性も充実させていきます。「自分の中のジブン、と相手の中のジブンが仲よくなれる」のです。

 家の仕事への参加を促すことも良い体験です。その際は、大人の便利なところで子どもを使おうとすることに気を付けて、子どもが自分で達成感がもて、子どもに任せられる内容を分担したいですね。
 料理だったら、さやえんどうの筋むいて、とか、みそ汁の味噌を量って入れてね、とか。洗剤の詰め替えなども、こぼしても大惨事にならないような場所で一からお任せするのも良いかもしれません。
 遊びは、大人も子どもも、くり返しの中で上達していけるようなゲームや運動がいいですね。大人も真剣にチャレンジしていくと互いに励みになるかも。

 健康や命を脅かす現状の危機は脱したいと強く願いますが、stay home!
 この特別な時間にしかできないことを、大人も子どもも経験できれば、未来をよく生きることにつながるだろうと思っています。
 ぜひ、子どもとの時間を楽しんで、じっくり子どもを見つめてみて下さい。

 6月に元気で会えますように。

2020年5月9日
キッズエンカレッジ
園長 日下部 樹江

認可保育園 Kid's Encourage

>>こちらからPDFがダウンロードいただけます。

新しい毎日!

 新年度が始まり1週間が経ちました。

 今年は、新型コロナウイルス感染拡大防止、非常事態の真最中に迎えることとなってしまい、新入園の保護者の皆様には最初から様々なご協力をお願いすることとなり、申し訳なく思いながらも、心あるご理解とご協力を頂き本当にありがたいです。

 保育園でできうる対策、衛生管理は十分にさせていただきながら、子どもたちにとっては楽しく、興味や意欲に満ちた毎日が送れるよう、保育者をはじめ全職員で日々の生活を営んで参りたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。 

 子どもたちは新しいお部屋や、クラスによっては新しい先生やお友だちになれてきた様子で、日中の様子は笑顔で遊び、関わる姿が見られます。
 現状では、活動範囲に制約がありながらも園庭でたくさん体を動かしたり、充実した遊具にイマジネーションされた再現遊びなど、個々が思い思いに遊び込む様子があります。乳幼児期という時期に、適度に環境からの刺激を受け、子ども自らが環境に関わることで学びとっていくことができる「育ちを支える環境」がとても大切です。

 子どもがその年齢、発達段階で欲する発達欲求を満たし、身につける事を保育の場では『発達課題に応える』と言いますが、そこにどう応える事ができるか?というのが、保育士の専門性ということになります。
 なので、各部屋の空間づくり、用意されている遊具も漠然とあるのではなく、担当の保育者が子どもの発達を見通しながら準備しています。
 各担任が、「この年齢の発達欲求で、子どもが興味を持ち、繰り返し楽しむ遊びや、知りたい、やってみたいと思えるような遊びや関り」を提供できるように見極め、工夫しています。
 もちろん、年齢が小さい子では大人にあやされることや、抱っこなどのスキンシップが喜びや安心になりますが、そうした安心や親しみを支えにしながら、どんなに小さな子どもでも自分から興味をもって主体的に遊ぶことが一番楽しいことだと思います。

 このように、私たちは、子どもが自然に能動的に遊び、生活していけることを意図して環境づくりをしています。
 そんな新しい毎日を、子ども達が元気で、活発にスタートできていることを何よりも嬉しく思います。

 陽気は日に日に春めいて、木々の葉も緑を増しています。自然も、子どもたちも変わらず命は芽吹き、育とう育とうとしています。

 不穏、不安がつのる社会事象はまだ続きそうですが、安全を守りながら、子どもと共に生命力旺盛な日々を築けるように努めてまいりたいと思います!

園長 日下部樹江

認可保育園 Kid's Encourage

明けましておめでとうございます

今年のお正月は、とてもいい天気が続いて気持ちがいいですね。
 年末の寒さで体調不良になっていた子どもたち、保護者の皆様はお休み中に回復されたでしょうか?来週から元気に会えることを楽しみにしています。


 昨年は、保育園でも「食べることとは生きること」をスローガンにして、食育活動を様々に行ってきました。栄養士、調理職員の丁寧な指導もあり、子どもたちは事前学習と調理実習をとても楽しく行うことができたと思います。クリスマス会では、子どもたちと作ったクッキーのレシピで作ったクッキーがプレゼントにもなりました。 味わっていただけましたか?


 そんな活動を経て、「食」に興味が高まった子どもたち、お正月はどんな食事をしているのかな?


 日本のお正月に食される伝統的なおせち料理や御雑煮など、経験することも少なくなってきたかもしれませんね。忙しい日常や、普段食べ慣れていないので好みではないことなど、伝統行事にちなんでの食事もしなくなっているのが現実かもしれませんね。
 ちなみに我が家のおせちは。

我が家のおせち

実はほとんど市販のものですが、お正月用の御重にそれらしく盛り付けてみました!😀

ちょっと豪華で、なんだか特別な日な感じでしょう?


実は、こんなふうに季節の伝統的な行事や食習慣を、無理のない範囲で、子どもと家族で楽しむことをすることが、子育てで大切にしたいことなのですね。
子育てを難しく考えずとも、生活の中での自立と社会性はこうしたことで発達していきます。


 親、大人の願いは、子どもが大きくなるにつれ「集団や社会の中でより良く適応していってほしい」という想いが強くなります。こうした願いにより、親は『しつけ』を意識するようになるのですし、もちろん適切な時期に適切な教育としてのしつけは必要になります。


 なぜなら、しつけをすることで、子どもが基本的な生活習慣を獲得し、自立していくこと、社会で適応していけることが、その子の人生の土台となる大切なものだと大人は考えるからです。


 どんなに個性、個人が尊重される社会でも、人間が社会で生きることを否定しては生存していくことができません。自分ひとりで、食べ物、衣服、住まいの全てを創りだすことは不可能でしょう?大人は、先回りしながらも、実はとても当たり前の愛情で心配しているのです。 でも、「しつけ方がわからない」から、時に厳しくしたり、甘やかしたり・・・迷走しがちなるのですよね・・💦

 そう、その心配は現実の側から見たら、とても当たり前なこと。人は生きる上で、必要不可欠である社会という集団がより良く成り立っていくように、その集団におけるルールを持ち、秩序を作って暮らしの調和を保っています。 子どもは、「生活の中の折り目」という生活の仕方や意味を、伝統行事や冠婚葬祭という儀式に触れることで知ること、感じること、考えることを経験していくことができるのです。


 しつける、という堅苦しい緊張感の中で親が子に強いるのではなく、たとえばお正月のように、親にとっても子どもにとっても特別な日に少し「特別なことをする」=日常の中の非日常を味わう体験が、子どもの内面の発達にたくさんの栄養分を与えることになるのです。


 そして、身近な大人と共に楽しく、物事によっては驚きをもって体験した子どもにとっての「特別な日」は、毎日の中で自由に再現できる経験として積み重なることで、子どもに新しい出来事と学びをもたらします。
 このような「強制されない学び」が、日常にあるように、私たち大人が少し生活の中の行事に意識を向けていきたいですね。


 イベント化を求めるのではなく、「行事の体験後の生活」にも続いていく、道具、空間、振る舞い方など様々な学習や知識の獲得が、子どもたちに手渡されていくことを願っています。


 保育園でも、個々の子どもの感じ方、受け取り方、楽しかった場面は子どもによって違うものですが、のちに子ども同士がそれを遊びの中で再現するときに、本当の行事の意味があるのだろうと考えています。
 無理のないところで、伝統や本物に出会うことが、日常に折り目をもたらし、豊かに子どもの感性へと取り込まれていくような子育てを、大人の私たちで実現したいですね!


 今年も、毎日の生活を丁寧に積み重ね、それを発揮できる行事も大事にしながら、子どもとの生活を充実させていきたいと思います。


 本年もどうぞよろしくお願いいたします。

樹江